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  • 尿管結石

    【尿管結石とは?】

    尿管結石(にょうかんけっせき)は、腎臓から膀胱へ尿を運ぶ細い管(尿管)に結石が詰まってしまう病気です。
    尿管は非常に細く、犬や猫では1mm前後しかありません。そのため、腎臓でできた小さな結石でも、尿管に詰まると尿の流れが止まり、腎臓に圧力がかかります。

    特に猫では両側性尿管結石が25%も存在し、そのうち10%は膀胱結石と関連しています。結石の多くはシュウ酸カルシウムでできています。

     

     

    特徴と危険性】

    両側の尿管が完全閉塞、または重度の部分閉塞になると、腎後性の高窒素血症(急性腎不全)を引き起こします。

    ・3〜6日以内に閉塞が解消されなければ、生命に関わる尿毒症に進行する可能性があります。

    ・片側の腎臓が正常に機能していれば、閉塞があっても尿毒症の症状は現れません。

    このため、尿管結石は緊急を要する病気であり、早期発見と治療が腎臓を守るカギです。

     

     

    症状】

    ・食欲が落ちる

    ・元気がない

    ・嘔吐

    ・排尿回数や排尿姿勢の変化

    ・腰やお腹を触られるのを嫌がる

    両側の尿管が詰まると、尿が全く出ず、ぐったりする、嘔吐やよだれが多くなるなど命に関わる症状が現れます。

     

     

    原因】

    尿管結石は、多くの場合、腎臓でできた結石が尿管に流れ出て詰まることで発生します。
    原因としては以下が考えられます。

    体質・遺伝:特定の犬種・猫種は結石ができやすい

    食事:ミネラルバランスの偏りや水分不足

    尿のpH:酸性・アルカリ性に偏ると結晶化しやすい

    感染や炎症:尿路感染で尿成分が変化し結石ができやすくなる

     

    診断】

    尿管結石の診断は、画像検査が中心です。

    X線検査

    多くの結石を確認できますが、種類によっては写らないこともあります。

    ⇨X線検査により、腎臓・尿管・膀胱・尿道のどの部位に結石があるのか判断します。

     

    超音波検査(エコー)

    尿管や腎臓内の尿の流れ、水腎症の有無を確認できます。

    ⇨腎盂の拡張を認める場合は、尿管閉塞を強く疑う所見となります。

     

     

    血液検査

    全身状態の把握をします。特に腎数値・電解質バランスを評価し、緊急性を評価します。

     

    ・尿検査:

    結晶や細菌の有無、pHを確認し結石の種類を推定します。

     

     

    治療】

    尿管結石は自然に出ることが難しく、早期の対応が重要です。

     

    ●内科的治療

    ごく小さい結石で尿の流れが保たれている場合に限り、点滴や利尿剤で自然排出を促すことがあります。

     

    尿の流れが悪い場合や腎機能が低下している場合は外科的治療が必要です。

    ⇨特に全身状態が悪い場合は、まずは内科治療を行い全身状態の改善を試みます。

     

    ●外科的治療(当院でも対応可能)尿管結石の位置により手術を選択します。

    当院では、結石の位置や大きさ、腎機能に合わせた手術・処置が可能ですので、緊急の場合も対応できます。

     

    ・尿管切開術:尿管を切開して結石を取り除きます。

    ・尿管ステントやSUBシステム:尿管内にチューブを設置して尿の流れを確保し、腎機能を守ります。

    尿管・膀胱吻合術

     

     

    【予後】

    尿管閉塞から早期に治療すれば腎機能回復可能

    片側尿管を1、2、4、6週間完全閉塞させた場合のGFR(腎血流量)の回復率

    1週間後:68%、2週間後:38.7%4週間後:9.8%6週間後:2%の回復率

    つまり、閉塞が長引くほど腎機能の回復が難しくなるため、早期発見と対応が非常に重要です。

     

     

    再発予防と日常管理】

    尿管結石は再発しやすいため、長期管理が大切です。

    療法食の継続:結石の再形成を防ぐ専用フード

    十分な水分摂取:ウェットフードの利用や水飲み場の増設

    定期検査:超音波・血液検査で腎臓・尿路の状態をチェック

    早期発見:食欲低下や嘔吐など小さな変化も見逃さない

     

     

    【まとめ】

    尿管結石は、緊急性が高く、放置すると腎臓にダメージが蓄積する可能性がある重大な病気です。
    「元気がない」「食欲が落ちた」「排尿の様子が変」などのサインが見られたら、すぐに動物病院で検査を受けることが重要です。

    当院では、緊急対応を含めた手術やSUBシステムによる治療が可能です。
    定期的な健康チェックと日常の観察で、愛犬・愛猫の腎臓と尿路の健康を守りましょう。

  • 膀胱結石

    【膀胱結石とは?】

    膀胱結石とは、膀胱の中に「石(結石)」ができてしまう病気です。
    尿の中には、本来であれば溶けているはずのミネラル成分(カルシウムやマグネシウムなど)が、何らかの理由で結晶化し、少しずつ固まって石のような塊になることで発生します。
    結石は、砂粒のように小さいものから、数センチほどの大きな石までさまざまです。

    膀胱は尿をためる臓器のため、結石ができると膀胱の粘膜を刺激して炎症や痛み、血尿を引き起こします。犬や猫では比較的よく見られる病気のひとつです。

     

    症状】

    膀胱結石ができても、最初のうちは症状がほとんど出ないこともあります。
    しかし、結石が大きくなったり、膀胱の壁を傷つけたりすると、次のような症状が見られるようになります。

    ・尿が少しずつしか出ない

    ・トイレに何度も行く

    ・血尿が出る(ピンク色や赤い尿)

    ・排尿のときに痛がる、鳴く

    ・トイレ以外の場所でおしっこをしてしまう

    ・元気や食欲がなくなる

     

    特にオスの場合、結石や結晶が尿道に詰まると尿がまったく出なくなることがあります。
    これは「尿閉(にょうへい)」と呼ばれ、命に関わる緊急事態です。
    排尿ができない、何度もトイレに行くのに尿が出ていない場合は、すぐに動物病院を受診してください。

     

     

    原因】

    膀胱結石の原因はいくつかあり、犬や猫の種類、食事、体質、感染などが関係しています。

    代表的な結石の種類は以下の通りです。

     

    ・ストラバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)

    ⇨尿がアルカリ性に傾くとできやすい。尿路感染が原因になることもあります。食事療法で溶解可能。

     

    ・シュウ酸カルシウム

    ⇨尿が酸性のときにできやすい。食事療法で溶解が難しい。

     

    ・尿酸アンモニウム、シスチン

    ⇨遺伝的な代謝異常が関与することが多い。

     

     

    診断】

    膀胱結石の診断には、いくつかの検査を組み合わせて行います。

    尿検査:尿のpH(酸性・アルカリ性)や結晶の有無を確認します。

    ⇨尿のph(酸性・アルカリ性)によりできやすい尿石の種類が変わります。また、一度の尿検査で判断せず、数回行うことが重要です。

     

    X線検査:多くの結石はレントゲンで確認できます。X線検査にて、結石の数・位置を確認します。

     

    超音波検査(エコー):レントゲンに写りにくい結石も確認でき、膀胱の炎症や尿の状態も分かります。

    結石の種類を正確に判断することが、今後の治療や再発予防にとても大切です。

     

     

    治療】

    膀胱結石の治療は、結石の種類・大きさ・症状の重さ によって変わります。

     

    ・食事療法

    特定の結石(特にストルバイト結石)は、療法食によって溶かすことが可能です。
    一方で、シュウ酸カルシウム結石などは食事で溶かすことができないため、再発予防を目的とした食事管理を行います。

     

    ・外科的治療

    結石が大きい、または尿道に詰まっている場合は、外科手術で膀胱を開いて石を取り出す必要があります。
    手術後は再発を防ぐため、結石の分析を行い、原因に合わせた食事や生活管理を続けることが大切です。

     

    ・内科的サポート

    抗菌薬による感染の治療や、排尿をスムーズにするための薬を併用する場合もあります。

     

     

    再発を防ぐために】

    膀胱結石は、治療後に再発しやすい病気です。
    再発予防のためには、次のようなポイントが重要です。

    療法食を継続する(自己判断で通常食に戻さない)

    十分な水分摂取(ウェットフードを取り入れる、水飲み場を増やす)

    定期的な尿検査(pHや結晶の有無をチェック)

    体重管理(肥満は結石リスクを高めます)

    これらを日常的に意識することで、再発のリスクを大きく減らすことができます。

     

    【まとめ】

    膀胱結石は、早期に発見し、正しく対処することで多くの場合は良好に管理できます。
    「最近トイレの回数が多い」「血尿が出ている」「排尿姿勢が長い」など、いつもと違う様子が見られたら、早めに動物病院で検査を受けましょう。

    愛犬・愛猫の尿の変化は、体からの大切なサインです。
    毎日の観察と定期的な健康チェックで、快適な暮らしを守ってあげましょう。

  • 11月:院長不在のお知らせ

    ◆ 11月9日(日)
    院長がセミナー参加のため 不在 となります。
    当日は、代診の獣医師 が診療を担当いたします。

    ・一般診療・予防接種・お薬の処方・各種検査(エコー・X線など)は 通常通り 行っております。

    ・院長による継続治療のご相談をご希望の方は、あらかじめご連絡いただくか、後日のご来院をおすすめいたします。

     

    ◆ 11月23日(日)
    院長不在のため、午後の診療は休診とさせていただきます。
    その代わり、午前の診療時間を14時まで延長いたします。

    診察時間:9:00〜14:00

     

    ご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
    皆さまにはご不便をおかけいたしますが、ご理解とご協力のほどよろしくお願いいたします。

  • 11月 パピー教室🐾

    パピー教室は、子犬と飼い主さんが一緒に楽しく学べる教室です。社会化やしつけの基礎、健康管理のポイントを分かりやすくお伝えします。さらに、子犬同士や子犬と人とのふれあいタイムも用意しています。

    もし周りに子犬を迎えたばかりで色々知りたい!という方がいたら、ぜひご紹介下さい。

     

    📅 日程(全3回セット)

    ・第1回:11月1日(土)12:00〜 成長ステージ、社会化期について

    ・第2回:11月8日(土)12:00〜 しつけ方法、知育玩具紹介

    ・第3回:11月15日(土)12:00〜 自宅でできる簡単健康チェック

    ⏱ 所要時間:各回約60分
    🎯 対象:生後4か月齢までのわんちゃん
    👥 定員:5組まで(要予約)
    💰 費用:10000円(税抜/全3回セット)、3500円(税抜/1回分)

     

    【ご参加にあたってのお願い】
    • パピー教室までに、必ず一度受診してください。
    • 初診・再診にかかわらず、一度は便検査を実施してください。
    • ノミ・マダニ予防を実施していること。
    • ワクチンを最低1回は接種していること。
    • 手術や診療の都合により、急遽予定が変更となる場合があります。

     

    📞 お申し込み・お問い合わせは電話にてご連絡下さい。

  • 猫のユリ中毒について

    美しく香りもよいユリの花ですが、猫にとっては命に関わる危険な植物です。たったの葉2枚や花びらの一部の誤飲ですら死に至らしめる可能性があり、植物全体(花粉、葉、雌しべ、花弁)もまた毒になります。

    特に春から初夏、贈り物や仏花などでユリを飾る機会が増える時期は、注意が必要です。

     

     

    【どんな植物が危険?】

    ユリ科・ユリ属に含まれる多くの花が危険です。
    代表的なものは、カサブランカ、テッポウユリ、タイガーリリー、スカシユリ、ヤマユリなど。
    花束や仏花、鉢植えに含まれていることも多く、花、葉、茎、花粉、水すべてが中毒の原因になります。
    犬では大量に食べても軽い胃腸炎程度で済むことが多いですが、猫ではほとんどが中毒症状を発症します。

     

     

    【中毒の特徴と症状】

    ユリ中毒では、**腎臓の尿細管が壊れてしまう「急性尿細管壊死」**を起こします。

     

    摂取後の経過は次のように進行します。

    ・2〜4時間以内:突然の嘔吐が見られるが、いったん落ち着く。

    ・12〜24時間後:尿が出なくなる(無尿性腎不全)。脱水も進行。

    ・2日目まで:嘔吐が続き、元気や食欲がなくなる。

    ・4〜7日目:腎臓が完全に機能しなくなり、死亡に至るケースも。

    初期症状は軽く見えても、時間が経つにつれて腎臓が壊れていくのがこの中毒の怖いところです。

     

     

    【診断】

    血液検査で腎臓の数値(クレアチニン:Cre、尿素窒素:BUNなど)が上昇します。
    ただし、これらの値が上がるまでには時間がかかるため、「ユリを食べたかもしれない」時点で受診することが重要です。

     

     

    【治療】

    ① 消化管洗浄(摂取直後)

    ユリを食べてから短時間(数時間以内)で来院した場合は、催吐処置・活性炭の投与・胃洗浄などで体内に吸収される前に排出します。

    ② 輸液療法(2〜3日間)

    無尿になる前に、早期の輸液治療を開始することが最も重要です。
    できるだけ早く(理想は24時間以内)に点滴を始めることが望ましい。

     

     

    【予後】

    ユリ中毒の予後は、どれだけ早期に対応できたが重要となります。

    早期に対応・治療を開始できれば、腎不全を防げる可能性が高いです。

    症状が進行してからでは腎臓の回復が難しく、命を落とすこともあります。

     

     

    【予防が何より大切!】

    ・猫のいる家庭では、ユリを置かないようにしましょう。。

    ・花瓶の水にも毒が含まれるため、猫が飲まないように注意。

    「少しくらいなら大丈夫」という油断が、取り返しのつかない結果を招くことがあります。

     

     

    【まとめ】

    ・猫にとってユリは極めて毒性の強い植物です。

    ・ごく微量でも急性腎不全を起こす可能性があります。

    ・摂取後48時間以内の治療が生死を分けるため、食べた可能性がある場合はすぐに動物病院へ連絡をください。

    ・ユリ科の植物を家に置かないことが最善の予防策です。

  • 犬・猫の皮膚肥満細胞腫

    【肥満細胞腫とは?】

    「肥満細胞腫(ひまんさいぼうしゅ)」は、犬や猫にできる皮膚の腫瘍のひとつです。
    肥満細胞というのは、本来は体の中でアレルギー反応や免疫に関わる細胞で、ヒスタミンなどの物質を放出する役割を持っています。この肥満細胞が腫瘍化して異常に増えてしまうと「肥満細胞腫」と呼ばれる腫瘍になります。

    犬では皮膚にできる腫瘍の中で最も多いもののひとつであり、猫でも比較的よくみられる腫瘍です。

    見た目は一見すると「ただのしこり」「できもの」に見えるため、早期に気づいて検査をすることがとても大切です。

     

     

    【症状】

    肥満細胞腫の症状はとても多様です。代表的なのは次のようなものです。

     

    ・皮膚のしこり:赤くなったり、毛が抜けたり、表面がただれて見えることもあります。

     

    ・大きさが変化する:触ると急に腫れたり小さくなったりすることがあります。これは肥満細胞からヒスタミンなどが放出され、一時的に炎症やむくみが出るためです。

     

    ・かゆみや痛み:犬や猫がしきりに舐めたり掻いたりすることもあります。

     

    ・全身症状:進行すると、嘔吐・下痢・食欲不振などの消化器症状が出ることもあります。これは腫瘍から放出される物質が胃や腸に影響を与えるためです。

     

    見た目は赤く盛り上がったドーム状になったり、脂肪腫のように丸いしこりに見えることもあります。そのため、外見だけでは「良性のしこり」か「悪性の腫瘍」かを見分けることはできません。

     

    ※肥満細胞腫の注意点※
    しこりを強く触ると、肥満細胞からヒスタミンという物質が放出され、しこりが赤く腫れたり一時的に大きく見えることがあります。まれに全身に影響して、ぐったりしたりショック状態になることもあります(これを「ダリエ徴候」と呼びます)。そのため、しこりを必要以上に刺激しないように注意しましょう。

     

    【診断】 

    肥満細胞腫かどうかを調べるためには、次のような検査を行います。

    ・細胞診
    しこりに細い針を刺して細胞を採り、顕微鏡で観察します。肥満細胞は特徴的な顆粒を持っているので、診断の手がかりになります。

     

    ・組織検査(生検)
    より詳しく調べる場合には、しこりの一部や全体を外科的に切り取り、病理検査に出します。腫瘍の「グレード(悪性度)」を調べるために必要です。

     

    ・血液検査・画像検査(X線・超音波検査など)
    腫瘍が転移していないか、リンパ節や内臓に広がっていないかを確認します。

    特に、肥満細胞腫は肝臓や脾臓に転移しやすいとされているので、注意が必要となります。

     

     

    【治療】

    肥満細胞腫の治療は、主に「外科手術」「薬物療法」に分けられます。

     

    ・外科手術 ⇨根治を目指せる!
    肥満細胞腫は周囲に広がることがあるため、腫瘍そのものだけでなく健康そうに見える皮膚も一緒に切除するのが理想です。もし転移がなく、皮膚にひとつだけの発生であれば、外科手術はとても効果的な治療になります。

     

    ・抗がん剤治療
    切除が難しい場合や転移がある場合には、抗がん剤を使うことがあります。近年では分子標的薬(特定の腫瘍細胞を狙い撃ちする薬)も使われるようになってきています。

     

    ・放射線治療
    一部の施設では放射線を使った治療が行われることもあります。

     

    ・補助療法
    腫瘍から放出されるヒスタミンによる副作用(胃潰瘍や嘔吐)を防ぐために、抗ヒスタミン薬や胃薬を併用することもあります。

     

     

    【予後について】

    肥満細胞腫は「良性のように振る舞うもの」から「非常に悪性で転移しやすいもの」まで幅が広い腫瘍です。

     

    ・低グレード(悪性度が低い):手術でしっかり切除すれば再発のリスクは比較的低く、良好な経過が期待できます。

    ・高グレード(悪性度が高い):転移や再発が起こりやすく、追加の治療や継続的な管理が必要になります。

     

    犬種によって発生しやすさに違いがあり、ボクサー、パグ、ラブラドールなどでは比較的多いことが知られています。猫では皮膚にできるタイプのほか、脾臓や消化管にできることもあります。

     

    グレード分類(Kiupel) ⇨病理組織検査で判断します!

    Kiupel分類(病理学的悪性度)

     

     

    【飼い主さんにできること】

    肥満細胞腫は「早期発見・早期治療」が何よりも大切です。

    次のことを意識してみてください。

    ・毎日スキンシップをしながら体を触り、しこりがないかチェックする。

    ・しこりを見つけたら「様子を見る」のではなく、早めに動物病院で検査してもらう。

    ・治療後も定期的な健診を受け、再発や転移がないか確認する。

     

    「ただのイボだと思ったら肥満細胞腫だった」というケースは少なくありません。飼い主さんが早く気づいてあげることで、その後の治療成績が大きく変わります。

     

     

    【まとめ】

    肥満細胞腫は犬や猫でよく見られる皮膚の腫瘍で、見た目だけでは良性か悪性かを判断できません。診断には細胞診や組織検査が必要で、治療は外科手術が基本となります。悪性度によって予後は大きく異なりますが、早期に発見し適切に治療することで、良好な生活を送れる可能性は十分にあります。

    「ちょっとしたしこりだから大丈夫」と油断せず、気になるものを見つけたら早めに動物病院にご相談ください。

  • 膝蓋骨脱臼(パテラ)

    【膝蓋骨脱臼とは?】

    膝蓋骨(しつがいこつ)とは、人間でいう「お皿の骨」にあたる部分で、犬や猫の後ろ足の膝関節にも存在します。この骨は本来、太ももの骨(大腿骨)の溝の中を上下に滑らかに動くことで、関節の曲げ伸ばしをスムーズにしています。

    しかし、何らかの原因で膝蓋骨が本来の溝から外れてしまう状態を「膝蓋骨脱臼(パテラ脱臼)」といいます。外れる方向によって「内方脱臼」「外方脱臼」に分かれますが、小型犬では特に「内方脱臼」が多くみられます。

     

     

    【どんな犬に多いの?原因は?】

    膝蓋骨脱臼は、主に次のような要因で起こります。

    ・先天的な要因(遺伝的素因)
    生まれつき大腿骨や脛骨の形がわずかに曲がっていたり、膝蓋骨を支える溝が浅いと、脱臼しやすくなります。
    特にトイ・プードル、チワワ、ポメラニアン、ヨークシャー・テリアなどの小型犬種でよく見られます。

    ・後天的な要因(外傷など)
    高いところからのジャンプや着地の衝撃、交通事故などがきっかけで発症することもあります。

     

     

    【症状】

    膝蓋骨が外れると、次のような症状が見られます。

    ・後ろ足をスキップするように時々浮かせる

    ・走っている途中で片足をピョコンと上げ、その後すぐに元通りに歩く

    ・慢性化すると、後ろ足がつかなくなったり、ずっと足を浮かせている状態になる

    ・両足に起こると、後ろ足を広げて座る「ペタ座り」が増える

    症状の程度は犬によって異なり、軽度だと飼い主さんが気づかないことも少なくありません。

     

     

    【グレード分類(重症度)】

    膝蓋骨脱臼は、一般的にグレード1~4に分類されます。

     

    ・グレード1(軽度)
    普段は正常に位置しているが、指で押すと簡単に外れてしまう。自然に元の位置に戻る。症状が出ないことも多い。

     

    ・グレード2(軽度~中等度)
    膝蓋骨が自然に外れることがあるが、しばらくすると自分で戻す。時々スキップするような歩き方をする。

     

    ・グレード3(中等度~重度)
    膝蓋骨が常に外れていることが多いが、指で押せば元に戻る。歩き方に明らかな異常があり、関節炎を伴うこともある。

     

    ・グレード4(重度)
    膝蓋骨が完全に外れたままで、指で押しても戻らない。歩行は強く制限され、膝関節や大腿骨の変形も進んでいることが多い。

     

     

    【治療】

    治療は、症状の程度や生活への影響によって変わります。

    ・グレード1~2(軽度)
    症状がほとんどなければ、すぐに手術は必要ありません。
    体重管理や滑りにくい床材への工夫、筋力アップのための適度な運動が大切です。

     

    ・グレード2で症状が多い場合、グレード3以上
    外科手術が推奨されます。手術では、膝蓋骨を支える溝を深くしたり、靱帯や骨の位置を調整して、膝蓋骨が安定するように修復します。

    ・グレード4(重度)
    高度な整形外科手術が必要になりますが、完全に正常な関節機能を取り戻すのは難しいケースもあります。

     

     

    【放置するとどうなるの?】

    軽度のまま経過観察で済むこともありますが、放置すると次のようなリスクが高まります。

    ・関節炎が進行して痛みが強くなる

    ・骨格の変形が進み、治療がより難しくなる

    ・他の関節(股関節や腰)に負担がかかり、歩行が悪化する(特に逆の後ろ足に影響が出ることが多いです)

     

     

    【予防と日常のケア】

    膝蓋骨脱臼を完全に防ぐことは難しいですが、日常生活の工夫でリスクを減らすことは可能です。

    ・体重管理:肥満は膝関節への大きな負担になります

    ・滑り止め対策:フローリングにマットを敷くと効果的です

    ・無理なジャンプを避ける:ソファやベッドの昇り降りは段差を設ける

    ・適度な筋肉トレーニング:お散歩で太ももの筋肉を鍛えると膝が安定します

     

     

    【まとめ】

    膝蓋骨脱臼は小型犬に多い関節の病気で、軽度のうちは症状が分かりにくいこともあります。しかし、放置すると進行して関節炎や歩行障害につながることもあります。

    症状の有無やグレードに応じて治療方法は異なりますが、早めの診断と適切なケアが犬の快適な生活につながります。気になる症状があれば、まずは動物病院で相談しましょう。

  • 🅿駐車場のご案内🅿

    当院では、専用の駐車場をご用意しております。

    場所は、当院の裏手に3台(6・7・8番)ございます。(イラストの🅿のマークです)
    なお、駐車場へお越しの際は、「一方通行」となっておりますのでご注意下さい。

    ご来院の際はぜひご利用ください。

    駐車場案内

  • 股関節形成不全

    【どんな病気?】

    股関節形成不全は、股関節のかみ合わせがうまくいかず、関節がゆるんでしまう病気です。その結果、関節に負担がかかり、痛みや歩き方の異常が出てきます。

    若い大型犬で多く見られますが、実はブルドッグやパグなどの短頭種でも発生率が高いと報告されています。小型犬では比較的まれです。

     

     

    【原因】

    様々な要因が関与しているとされています。

    ・遺伝的な要因

    ・骨や筋肉の成長のバランスが悪いこと

    ・急激な体重増加や肥満

    ・栄養の過不足(特にカルシウムやビタミンDのとりすぎ)

     

     

    【症状】

    ・腰を大きく振って歩く(モンローウォーク)

    ・ウサギのように後ろ足をそろえて跳ねる走り方

    ・休んだあとに立ち上がりにくい

    ・階段やジャンプを嫌がる

    ・散歩中すぐ疲れる

     

     

    【どんな風に進む?】

    ・子犬期(4〜12か月齢):股関節がゆるく、歩き方に異常が出やすい。

    ・成長とともに症状が軽くなることもある。

    ・しかし、大人になると変形性関節症(関節炎)が進行して、再び痛みや歩行障害が出てくることが多い。

     

     

    【診断】

    ・触診:関節を動かしたときの痛みや股関節のゆるみを調べます。(オルトラニ試験など)

    ・レントゲン:確定診断に必要です。骨の適合具合や関節炎の有無を評価します。

     

     

    【治療】

    大きく分けて「保存療法」「外科手術」があります。

     

    ●保存療法(多くの犬に有効)

    ・体重管理(肥満は関節に大きな負担)

    ・毎日の適度な運動(水泳や芝生の散歩が◎)

    ・滑りにくい床材を使う

    ・痛み止めやサプリメントの使用

     

    ●外科手術

    症状が強い場合や若齢犬で予防的に行うことがあります。

    ・3点骨盤骨切り術(TPO)

    ・大腿骨頭切除術(FHNO)

    ・人工股関節置換術(THR)

    手術後はリハビリや運動管理が重要です。

     

     

    【飼い主様ができること】

    ・太らせすぎない

    ・適度に運動をさせる

    ・家の中を滑りにくくする

    ・症状が見えたら早めに病院へ

     

     

    【まとめ】

    股関節形成不全は、犬にとって痛みや生活の質の低下をもたらす病気です。早期に気づき、適切な管理や治療を行えば、元気に暮らせる期間を大きく伸ばすことができます。

    「歩き方が変」「散歩を嫌がる」と感じたら、早めに動物病院にご相談ください。

     

  • 犬・猫の予防歯科について

    【歯周病はとても身近な病気】

    犬や猫の多くは3歳を過ぎると、何らかの歯周病を抱えているといわれています。歯周病は「歯ぐきが赤い」「口臭が強い」といった初期症状から始まり、進行すると歯が抜けたり、顎の骨にまで影響を与える深刻な病気です。さらに、口腔内の細菌が血流にのって全身に広がることで、心臓や腎臓などの臓器に悪影響を与えることもあります。

    この歯周病を予防・管理するために必要なのが「予防歯科」です。

     

     

    【歯周病について】

    歯周病の原因は「歯垢(プラーク)」です。

    「歯石が原因で歯周病になる」と思われがちですが、実はこれは誤解です。

    歯周病の原因は、歯の表面に付着する歯垢(プラーク)です。歯垢は細菌の塊で、放置すると数日で歯石に変化します。歯石中細菌の活動はほとんどなく、歯石の表面がザラザラしているため新しい歯垢が付きやすい環境を作ります。つまり、歯石は「二次的に歯周病を悪化させる要因」なのです。

    そのため、「歯石をとった=歯周病が治った」わけではなく、最も大切なのは日々の歯垢コントロールなのです。

     

     

    【無麻酔での歯石除去】

    近年、一部で「無麻酔での歯石取り」が行われていますが、これはとても危険な行為です。

    当院では、無麻酔での歯石除去は推奨しておりません。

     

    (無麻酔での歯石除去が危険な理由)

    1、 外傷のリスク

    スケーラーや鉗子は先端が鋭利で、犬や猫が少しでも動けば歯肉や舌、口腔粘膜を傷つけてしまいます。実際に歯を折ってしまったり、歯肉を気付付けてしまい出血する事故も報告されています。

    2、 歯周炎の治療にはならない

    歯周炎がある場合、炎症を起こしている歯肉の下(歯周ポケット)に歯垢や歯石がたまっています。無麻酔での処置ではポケットの奥にアプローチできないため、肝心の原因はそのまま残ってしまい、むしろ炎症を悪化させることがあります。

    3、痛みと恐怖を与える

    炎症がある歯肉に器具が当たると出血や強い痛みを伴います。犬や猫は強い恐怖を覚え、以後の家庭での歯みがきを嫌がる原因にもなります。

     

     

    【動物病院で行う正しい処置】

    動物病院でのスケーリング(歯石除去)は、全身麻酔下で行うのが原則です。
    麻酔をかけることで動物が動かず安全に処置できるだけでなく、歯周ポケットの奥深くまで洗浄・清掃が可能になります。また、歯面をポリッシング(研磨)することで、歯垢が再びつきにくい環境を整えることができます。

    麻酔にリスクがあるのでは?と心配される方もいますが、事前の検査を行うことで安全性を高め、必要に応じて低侵襲な麻酔管理を行います。

     

    一番の予防は「毎日の歯みがき」

    歯周炎の原因は「歯垢」であり、それは数時間で形成されます。そのため、定期的に歯垢を除去すること=歯みがき習慣が最も重要です。

     

    (歯みがきのコツ)

    1、子犬・子猫の頃から少しずつ慣らす

    2、指で歯ぐきを触る → ガーゼで拭く → 歯ブラシへとステップアップ

    3、ペット用の歯ブラシと歯みがきペーストを使用

    4、嫌がる前に短時間で終え、必ず褒める

    歯みがきが難しい場合は補助ケアもあります。

    ・デンタルガムやデンタルフード

    ・水に混ぜるタイプのデンタルケア製品

    ・サプリメント

    ただし、これらはあくまで補助であり、やはり歯みがきに勝る予防はありません。

     

     

    【まとめ】

    犬や猫の口腔ケアは、健康寿命を大きく左右します。

    ・歯周病の原因は「歯石」ではなく「歯垢」

    ・無麻酔での歯石除去は危険で治療にもならない

    ・動物病院では麻酔下で安全に処置し、歯面を整えることが重要

    ・そして最も大切なのは、飼い主さんによる毎日の歯みがき

    予防歯科は「病気になってから治す」医療ではなく、「病気を防ぎ、快適な生活を守る」医療です。

    当院では、全身麻酔下での歯科処置が可能です。

    「歯みがきの仕方が分からない」「口臭が気になる」など、気になることがあれば是非お気軽にご相談ください。