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  • 年末年始の診療について

    平素より だん動物病院 をご利用いただき、誠にありがとうございます。
    年末年始の診療体制についてお知らせいたします。

     

    ■ 診療案内

    2025/12/30(火) 通常診療

    2025/12/31(水) ~ 2026/1/3(土) 休診

    2026/1/4(日) 通常診療

     

    ※フード・お薬のご用意が必要な方は、お早めにご相談ください。

     

     

    ■ トリミング

    1月5日(月)より通常通りご予約可能 です。

    年始は予約が混み合うことが予想されますので、お早めのご予約をおすすめいたします。

     

    年末年始は休診日が続き、ご不便・ご迷惑をおかけいたしますが、何卒ご理解のほどよろしくお願いいたします。

     

     

     

  • アトピー性皮膚炎

    犬のアトピー性皮膚炎(Canine Atopic Dermatitis:CAD)は、遺伝的な体質に加え、環境中のアレルゲン(ハウスダスト、ダニ、花粉、カビなど)に対する過剰な免疫反応によって起こる、慢性的で再発しやすい皮膚疾患です。若齢期(1〜3歳頃)から発症することが多く、一生を通しての管理が必要になる場合があります。

    近年は治療の選択肢も増え、適切な治療とスキンケアにより多くの犬で生活の質が改善できるようになっています。

     

     

    こんな症状はありませんか?
    生後6カ月~4歳の間にかゆみが始まった
    ✔ 季節の変わり目に 症状が悪化しやすい
    皮膚感染症(膿皮症・マラセチア性皮膚炎)を繰り返している
    ✔ 治療しても すぐに再発する

     

    これらに当てはまる場合は、アトピー性皮膚炎の可能性があります。

     

     

    【診断】

    アトピー性皮膚炎の診断は、「除外診断」が基本です。
    皮膚の状態を詳しくチェックし、他の病気(寄生虫・細菌感染・食物アレルギーなど)を除外して診断を行います。

    ・ 皮膚の視診・検査(細胞診・培養検査など)
    ・ アレルギー検査(必要に応じて実施)

     

     

    【治療】

    アトピー性皮膚炎は 一生付き合っていく病気 ですが、適切な治療で症状をコントロールできます。

     

    ・当院では、3つのアプローチで治療を行います。

     

     

    ① かゆみを抑える治療(投薬・注射)

    ・アポキル錠(オクラシチニブ)/ゼンレリア(イルノシチニブ):かゆみのシグナルをブロック
    ・サイトポイント(注射薬):1回の注射で1カ月効果が持続
    ・シクロスポリン(免疫抑制剤)
    ・ステロイド(短期間の炎症抑制)

     

    ② 皮膚のバリア機能を改善

    ・保湿剤の使用
    ・殺菌・保湿シャンプー療法(ノルバサン、ヒノケアなど)
    ・サプリメント(必須脂肪酸、乳酸菌など)

     

    ③ 環境の改善

    ・室内の掃除や換気
    ・アレルゲンの回避(散歩コースの見直し など)

     

    投薬だけに頼らず、スキンケアや生活環境を整えることで、より負担の少ない治療を目指します。

     

     

    「このかゆみ、どうにかしてあげたい…」と思ったら、お気軽にご相談ください!

    当院では、飼い主様とペットに寄り添い、最適な治療プランを一緒に考えます。
    症状に合わせたオーダーメイドの治療で、ペットが快適に過ごせるようサポートいたします!

  • レプトスピラ症

    レプトスピラ症は、「レプトスピラ」という細菌によって引き起こされる 人獣共通感染症(動物から人にもうつる病気)です。主に犬で多く見られますが、猫では比較的まれと言われています。重症化すると命に関わることがあるため、早期診断と治療、そして予防が非常に重要です。

     

     

    【感染経路】

    レプトスピラ菌は ネズミなどの野生動物の尿を介して環境中に広がります。
    汚染された水たまり・川・湿った草むらなどに生息し、特に 雨の多い季節や河川の多い地域で感染リスクが高まります。

     

     

    【主な感染経路】

    レプトスピラに汚染された 水や土の接触

    汚染された水を 飲む

    傷口や粘膜(口・鼻・目)からの 細菌の侵入

    感染している動物の尿との接触

    犬のお散歩中に水たまりの水を飲んだり、草むらに顔を突っ込んだりすることで感染することがあります。

     

     

    【症状】

    レプトスピラ症の症状は多様で、軽度のものから急激に悪化するものまで様々です。

     

    発熱

    元気・食欲の低下

    嘔吐・下痢

    脱水

    一見、ごく一般的な体調不良と見分けがつかないこともあります。

     

    ・進行すると…

    レプトスピラは 肝臓と腎臓を強く侵すため、以下のような重症症状が出ることがあります。

    黄疸(歯ぐきや白目が黄色くなる)

    ・尿量が減る、または増える(急性腎不全

    ・重度の脱水

    肺出血症候群(LPHS:Leptospiral Pulmonary Hemorrhage Syndrome)

    ・多臓器不全

    これらの症状が出た場合、緊急治療が必要となります。

     

     

    診断】

    レプトスピラ症の診断には 血液検査・尿検査・超音波検査などが用いられますが、確定には以下の検査が重要です。

     

    ・レプトスピラ抗体価(MAT検査)

    レプトスピラに対する抗体を測定します。
    ワクチンや感染時期の影響を受けるため、 ペア血清(2回測定して上昇を確認) が有効です。

     

    ・PCR検査

    血液や尿に含まれるレプトスピラの遺伝子を検出する検査で、早期診断に最も有用とされています。

    ※状況によっては複数検査を組み合わせて診断します。

     

     

    治療】

    レプトスピラ症は 早期治療が予後を大きく左右します。

    ・ 抗生物質

    ・ 対症療法

    適切な治療を早く始めることが命を救うポイントです。

     

     

    予防が最も大切:ワクチンで守る】

    レプトスピラ症は ワクチンで予防可能な感染症です。

     

    (ワクチンを推奨する犬)

    ・河川敷のお散歩が多い

    ・草むら・水場に入る

    ・野生動物(特にネズミ)が多い地域

    ・皮下や粘膜に傷がつきやすい

    地域によって流行株が異なることがあるため、動物病院で最適なワクチンを相談してください。

     

     

    人への感染について】

    レプトスピラ症は 人にも感染します。

    感染犬の尿にはレプトスピラが排泄されるため、家庭内で看病する際は以下を徹底する必要があります。

    ・尿や嘔吐物の取り扱いに手袋・マスクを使用

    ・排泄物の消毒(次亜塩素酸ナトリウムが有効)

    ・こまめな手洗い

    治療中の犬に触れた程度では感染リスクは低いですが、念のため対策を徹底することが大切です。

     

     

    【まとめ】

    レプトスピラ症は、自然環境に潜む細菌による危険な感染症です。

    ・発生地域では意外と身近

    ・早期診断・早期治療が命を救う

    ・ワクチン接種で予防可能

    ・人にも感染するため注意が必要

    「いつもと違う元気のなさ」「急な発熱」「黄疸」などが見られたら、早めに動物病院へご相談ください。

    だん動物病院では、地域の環境や生活スタイルに合わせた 最適なワクチン計画のご提案 や、疑わしい症状がある場合の 迅速な検査と治療 に対応しています。

     

  • 12月の歯みがき教室のお知らせ

    だん動物病院では、ワンちゃんのための「歯みがき教室」を開催しています。
    「うちの子が歯みがきを嫌がる…」「気になってはいるけど、やり方がわからない」という飼い主さまのお悩みにお応えする教室です。

    毎日のケアを楽しく続けられるよう、当院の看護師がステップごとに優しくレクチャーします。

     

    🗓 12月の開催日

    • 12月9日(火)16:00〜17:00
    • 12月23日(火)16:00〜17:00

    ※どちらも 事前予約制/各回 2組まで

     

    🐾 教室の内容

    講義形式のグループレッスンで、以下のような内容をお伝えします。

    ・お口の健康の大切さ

    ・歯みがきのステップとコツ

    ・おすすめのデンタルケア用品の紹介

    初心者の方も安心してご参加いただける内容です。

     

    👥 定員

    各回 2組まで
    少人数制でしっかりサポートいたします。

     

    💰 参加費

    1回 2,000円(税抜)

     

    📞 ご予約方法

    お電話にて受け付けております。
    お気軽にお問い合わせください。

     

    🦷 最後に

    毎日の歯みがきは、ワンちゃんの健康を守る大切な習慣です。
    「できるところから」「楽しみながら」を合言葉に、だん動物病院が皆さまをサポートいたします。

    ご参加を心よりお待ちしております🐾

  • 僧帽弁閉鎖不全症

    犬の心臓病の中で最も多くみられる病気が「僧帽弁閉鎖不全症(Mitral Valve Degeneration:MVDまたはMMVD)」です。特に高齢の小型犬に多く、進行性の病気であるため、早期発見と適切な治療がとても重要になります。ここでは、僧帽弁閉鎖不全症の原因、症状、診断、治療、そしてご自宅での注意点について詳しく解説します。

     

     

    【僧帽弁閉鎖不全症とは?】

    心臓は4つの部屋に分かれ、その中で左心房と左心室の間には「僧帽弁」という扉の役割をする弁が存在します。正常な心臓では、この弁がしっかり閉じることで血液が逆流しないように働きます。しかし僧帽弁閉鎖不全症では、この僧帽弁が変形したり、弁を支える腱索が伸びたり切れたりすることで、弁が完全に閉まらず、血液が左心房へ逆流してしまいます。

    この逆流が続くと、心臓に負担がかかり、徐々に心臓の拡大(心拡大)や心不全へと進行していきます。

     

     

    【好発犬種と原因】

    僧帽弁閉鎖不全症は特に以下の犬種で多く見られます。

    キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル

    ・トイ・プードル

    ・チワワ

    ・ミニチュア・ダックスフンド

    ・ポメラニアン

    ・シーズー など

    主な原因は**加齢に伴う弁の変性(退行性変化)**で、遺伝的素因も関与していると考えられています。小型犬では7〜8歳頃から増えてくる病気であり、超高齢犬では非常に一般的な心疾患です。

     

     

    【症状】

    病気の初期はほとんど症状がなく、健康診断で初めて「心雑音を指摘される」というケースが多くあります。

    進行してくると以下のような症状が見られます。

    ・咳が出る

    ・運動を嫌がる、疲れやすい(運動不耐)

    ・呼吸が早くなる、苦しそうにする

    ・寝ているときに息が荒い

    ・失神(ふらついて倒れる)

    さらに悪化すると、肺に水がたまる「肺水腫」を起こし、命に関わる状態になります。咳や呼吸困難は特に重要なサインです。

     

     

    診断】

    ・聴診

    最初の手がかりとなるのが心雑音です。僧帽弁逆流による特徴的な雑音が確認できます。

     

    ・胸部レントゲン検査

    心臓の大きさや、肺の状態(肺水腫の有無)を評価します。

     

    ・心臓の超音波検査

    僧帽弁の形態、逆流の程度、心臓の拡大度などを詳しく評価できる最も重要な検査です。

     

    ・血液検査(NT-proBNPなど)

    心臓への負担の程度を知るために利用します。

     

    これらの情報を組み合わせて、病気のステージ(ACVIM分類)を判断し、治療が必要かどうかを決めます。

     

     

    【治療】

    僧帽弁閉鎖不全症は根本的に治すことは難しい病気ですが、薬で進行を抑え、症状を改善し、寿命を大きく延ばすことができます。

     

    1、内科治療

    病期によって使用する薬は異なりますが、一般的には以下の薬が用いられます。

    ピモベンダン(心臓の収縮力を高め、負担を減らす)

    ACE阻害薬(血管を広げ心臓の負荷を軽減)

    利尿薬(肺水腫がある場合)

     

     

    2、手術(弁形成術)

    近年では、専門施設で「僧帽弁形成術」という高度な心臓手術が可能になっており、根治が期待できます。ただし費用・リスク・適応条件があるため、専門医と相談が必要です。

     

     

    3、食事・サプリメント

    低塩分食

    オメガ3脂肪酸

    ・食事(心臓サポートなど)

     

     

    【ご家庭で気をつけてほしいこと】

    僧帽弁閉鎖不全症の犬は、日常生活での細かい観察が非常に大切です。

    ・呼吸数を毎日チェック(寝ているときに1分間で40回を超えると要注意

    ・急な咳の悪化に気づく(特に水っぽい咳をした時は注意が必要です!)

    ・定期的に心臓検査を受ける

    特に呼吸数は肺水腫の早期発見に役立ち、命を救うことにつながります。

  • 急性腎不全

    急性腎不全(急性腎障害)とは?

    急性腎不全(AKI)は、腎臓の働きが急激に低下する状態を指します。腎臓は血液をろ過して老廃物を排泄し、体の水分や電解質バランスを保つ重要な臓器です。この腎臓の機能が短期間で低下すると、体内に老廃物や余分な水分がたまり、全身にさまざまな症状が現れます。

    急性腎不全は急に発症する病気であり、早期発見・早期治療が非常に重要です。放置すると命に関わることもあります。

     

     

    原因】

    急性腎不全の原因は大きく分けて以下の3つに分類されます。

     

    1、腎前性(血流不足による腎障害)
    腎臓自体に問題はないものの、血液の流れが不足して腎臓が正常に機能できなくなる状態です。
    (主な原因)

    ・脱水(下痢・嘔吐による水分不足)

    ・出血やショック

    ・心臓病による血流低下

     

    2、腎性(腎臓そのものの障害)
    腎臓自体の組織が損傷されて機能が低下する状態です。
    (主な原因)

    ・感染症:

      ⇨ 犬レプトスピラ症腎盂腎炎、ロッキー山紅斑熱、ボレリア菌によるライム病など

      ⇨ 猫腎盂腎炎FIPなど

    ・中毒(ユリ中毒、抗生物質や抗腫瘍薬、鎮痛薬の副作用など)

    ・免疫介在性疾患

     

    3、腎後性(尿の排泄障害による腎障害)

    尿が腎臓から体外に排泄されないことで腎臓に負担がかかる状態です。
    (主な原因)

    ・尿路結石

    ・尿道閉塞(特に雄猫に多い)

    ・腫瘍や外傷による尿路閉塞

     

     

    症状】

    ・食欲不振、元気がない

    ・嘔吐、下痢

    ・多尿または尿量減少(尿が出ない場合は緊急事態)

    ・脱水、口の乾き

    ・体重減少

    ・お腹や足のむくみ

    ・口臭(尿毒症臭)

    ・ふらつきや痙攣(重症例)

     

    特に尿が出ない、または少ない場合は腎不全が急速に進行している可能性があり、すぐに動物病院での治療が必要です。

     

     

    診断】

     

    ・血液検査

    血中尿素窒素(BUN)やクレアチニンの上昇

    電解質(カリウム、ナトリウム、リンなど)の異常 など

     

    ・尿検査

    尿比重や蛋白、血液、細胞の有無を確認

    尿中の老廃物排泄の状態を評価

     

    ・画像検査(X線・超音波)

    腎臓や尿路の構造異常、結石、腫瘍の有無を確認

    ⇨特に尿管閉塞、腎臓腫瘍の有無などを評価する必要になります

     

     

    【治療】

    急性腎不全は、原因の特定と早期対応が治療の鍵です。

    • 輸液療法

    ・水分や電解質を補い、腎臓への血流を回復させる

    ・脱水やショックが原因の場合は特に重要

     

    • 原因への対応

    ・尿路閉塞:カテーテルや手術による尿の排泄確保

    ・中毒:中毒物の除去や解毒剤投与

    ・感染症:抗生物質の投与

     

    • 対症療法

     

    急性腎不全は早期に適切な治療を行えば回復することもありますが、発症から時間が経過すると不可逆的な腎障害を残すことがあります。

     

     

    【予防のポイント】

    急性腎不全を予防するためには、以下の点に注意しましょう。

    ・水分補給をしっかり行う(特に夏場や高齢猫)

    ・尿路閉塞や中毒のリスクを避ける

    ⇨ユリ科の植物は猫にとって非常に危険のため、部屋に置かないようにする。

    ⇨尿石症のリスクのある動物には食事管理などでしっかり管理をする必要あります。

    ・定期的な健康チェック

    高齢犬・猫は血液・尿検査で腎機能を確認

    早期の異常発見が命を救う

     

     

    【まとめ】

    急性腎不全は、腎臓の機能が急速に低下する危険な病態です。特に猫では、尿路閉塞や中毒が原因となることが多く、尿の異常や元気消失が見られたらすぐに動物病院へ行くことが重要です。早期発見・早期治療によって回復する可能性がありますが、進行すると命に関わることもあります。

    愛犬・愛猫の健康を守るためには、日常的な観察と定期的な健康チェックが欠かせません。少しでも異変を感じたら、自己判断せずに動物病院で相談しましょう。

  • 12月 パピー教室

    パピー教室は、子犬と飼い主さんが一緒に楽しく学べる教室です。社会化やしつけの基礎、健康管理のポイントを分かりやすくお伝えします。さらに、子犬同士や子犬と人とのふれあいタイムも用意しています。

    もし周りに子犬を迎えたばかりで色々知りたい!という方がいたら、ぜひご紹介下さい。

     

    📅 日程(全3回セット)

    ・第1回:12月6日(土)12:00〜 成長ステージ、社会化期について

    ・第2回:12月13日(土)12:00〜 しつけ方法、知育玩具紹介

    ・第3回:12月20日(土)12:00〜 自宅でできる簡単健康チェック

    ⏱ 所要時間:各回約60分
    🎯 対象:生後4か月齢までのわんちゃん
    👥 定員:5組まで(要予約)
    💰 費用:10000円(税抜/全3回セット)、3500円(税抜/1回分)

     

    【ご参加にあたってのお願い】
    • パピー教室までに、必ず一度受診してください。
    • 初診・再診にかかわらず、一度は便検査を実施してください。
    • ノミ・マダニ予防を実施していること。
    • ワクチンを最低1回は接種していること。
    • 手術や診療の都合により、急遽予定が変更となる場合があります。

     

    📞 お申し込み・お問い合わせは電話にてご連絡下さい。

  • 肛門嚢アポクリン腺癌

    犬の肛門の両脇には「肛門嚢(こうもんのう)」と呼ばれる袋状の器官があります。ここには分泌液をつくる腺があり、マーキングや排便時の臭いづけなどに関係していると考えられています。この肛門嚢にできる代表的な悪性腫瘍のひとつが「肛門嚢アポクリン腺癌」です。

    肛門嚢アポクリン腺癌は、肛門周囲の悪性腫瘍の17%を占めます。好発犬種としては、アメリカンコッカースパニエル、ジャーマンシェパード、ダックスフンドが挙げられます。

    また、この腫瘍は転移率が高く診断時には26-89%がリンパ節転移、0-42%が遠隔転移を認めることがある悪性腫瘍になります。

     

     

    【症状】

    初期には無症状のことが多く、飼い主さまが気づいたときには腫瘍が大きくなっていることもあります。次のような症状が見られる場合は注意が必要です。

    ・肛門の片側にしこりふくらみがある

    ・排便時に痛がる便が細くなる

    ・肛門をよくなめる、気にする

    多飲多尿(お水をよく飲み、尿の量が多い)

    ・元気がない、食欲が落ちる

    この病気の特徴のひとつが「高カルシウム血症」です。約半数の症例で血中カルシウム濃度が上昇し、腎臓への負担多飲多尿などを引き起こします。

     

     

    【診断】

    肛門嚢の周囲にしこりを見つけた場合、まずは直腸検査(指での触診)で確認します。その後、より正確に診断するために以下の検査を行います。

    細胞診または組織検査:しこりの細胞を採取して、腫瘍の種類を確認します。

    血液検査:カルシウム値の上昇や腎機能のチェックを行います。

    レントゲン・超音波検査・CT検査:おなかの中のリンパ節や肺への転移がないか調べます。

     

    【臨床ステージ分類】

     

    治療】

    ・治療の基本は外科的切除です。

    腫瘍が大きくなる前に切除することが望ましい。

    ⇨根治が難しい場合でもできる限り摘出して腫瘍を減らす(減容積手術)ことで、高カルシウム血症を改善できることがあります。

     

    ・切除後には、再発や転移を防ぐ目的放射線治療(RT)抗がん剤治療を併用する場合もあります。

    また、高カルシウム血症がある場合には、点滴や薬によるカルシウム値のコントロールも重要です。

     

     

    予後】

    肛門嚢アポクリン腺癌は悪性度が高い腫瘍ですが、早期発見・早期治療を行うことで寿命を延ばせることがわかっています。

     

    中央生存期間中央値:386~960日

    1年生存率および2年生存率:それぞれ65%、29%

     

    転移が進んでいる場合でも、状況によっては症状を和らげる「緩和治療」により、生活の質を保ちながら過ごすことも可能です。

  • 🦷 わんちゃんの歯みがき教室開催のお知らせ 🪥

    〜おうちでできる歯みがきを身につけよう!〜

    「うちの子、歯みがきを嫌がってしまう…」
    「興味はあるけど、どう始めたらいいかわからない…」

    そんな飼い主さまに向けて、だん動物病院では「歯みがき教室」を開催します🐶✨

     

    🐾 教室の内容

    講義形式(グループ)で、歯みがきの基礎から実践のコツまで、わかりやすくお伝えします。

    内容:

    • お口の健康が大切な理由(歯肉炎・歯周病の違い)

    • 口を触る練習〜歯ブラシへ進むステップ

    • おすすめのデンタルケア用品紹介

    • 質疑応答

     

    🩺 担当:当院の専任スタッフ

     

    🗓 開催日

    • 11月11日(火)16:00〜17:00

    • 11月25日(火)16:00〜17:00

     

    👥 定員: 各回 2組

     

    💰 参加費: 1回 2,000円(税抜)

     

    📞 ご予約方法

    お電話にてご予約を承っております。
    お気軽にお問い合わせください。

  • 犬と猫のネギ(玉ねぎ)中毒

    【ネギ中毒とは】

    犬や猫がたまねぎやネギ類(長ネギ、ニラ、ニンニクなど)を食べることで起こる中毒のことを「たまねぎ中毒(ネギ中毒)」と呼びます。
    これらの植物には、有機チオ硫酸化合物という成分が含まれており、動物の赤血球を酸化・破壊
    してしまう性質があります。

    人間では問題ありませんが、犬や猫の赤血球はこの酸化に非常に弱いため、体内で「ハインツ小体(Heinz body)」と呼ばれる構造物が作られ、赤血球が壊れやすくなります。
    この結果、体の中で溶血性貧血(赤血球が壊れることによる貧血)が起こり、命に関わることもあります。

    この中毒は、「たまねぎを食べた量」だけでなく、「個体の体質」や「加熱の有無」にも関係します。
    つまり、少量でも体質や体格によっては命に関わることがあるのです。

     

     

    【中毒を起こす食べ物】

    犬や猫が中毒を起こすのは、たまねぎだけではありません。
    同じ成分が含まれている以下の食材にも注意が必要です。

    ・たまねぎ

    ・ネギ

    ・ニンニク

    ・ニラ

    ・シャロット など

     

    特徴的なのは、加熱調理や乾燥加工をしても毒性が残るという点です。
    つまり、炒めても、煮ても、スープに溶けても安全にはなりません。
    また、粉末スープやベビーフード、ハンバーグ・味噌汁・カレーなどの調理品でも中毒を起こします。

    さらに、猫は犬よりも感受性が高く、ごく少量の摂取でも血液学的変化を起こす可能性があります。
    一般に、体重1kgあたり5gのたまねぎで中毒が起こるとされています。

     

     

    症状】

    症状は、摂取してすぐではなく、1日〜数日後に現れるのが特徴です。
    赤血球が破壊されるスピードや個体の体質によって、症状の強さは異なります。

     

    主な症状は以下の通りです。

    ・元気がない、ぐったりしている

    ・食欲がない

    ・嘔吐、下痢

    ・頻脈(脈が速い)

    ・歯ぐきや目の結膜が白っぽい(貧血)

    ・黄疸(白目や耳の内側が黄色くなる)

    ・血尿、赤色〜褐色の尿

    ・呼吸が荒い、苦しそう

     

    貧血が進行すると、粘膜が蒼白になり、虚脱(ぐったりする)、呼吸数や心拍数の増加、黄疸、赤褐色の尿などが目立つようになります。
    重症化した場合、適切な治療を行わないと死亡することもあります

     

     

    診断】

    診断は、血液検査を行います。

     

     

    治療】

    治療は摂取量・経過時間・症状の重さによって異なります。

    ・摂取直後(数時間以内)
    動物病院で催吐処置(吐かせる)を行い、体内への吸収を防ぎます。
    活性炭の投与で毒素の吸収を抑えることもあります。

     

    ・内科的治療
    点滴治療(老廃物や毒素の排出を促します。)

    活性炭の投与(毒素の吸収を防ぎます)
    必要に応じて酸素吸入輸血を行うこともあります。
    予防】

    たまねぎ中毒は、飼い主の注意で完全に防ぐことができる中毒です。

    ・人の食べ物(特にハンバーグ・カレー・味噌汁・スープ類)は与えない

    ・たまねぎやニンニクを使った料理の残り汁も危険

    ・調理中やゴミ箱、台所に置いた食材にも注意

    ・家族全員で「ネギ類は絶対に与えない」と共有する

     

     

    まとめ】

    犬や猫のたまねぎ中毒は、身近な食材によって起こる深刻な中毒です。
    加熱しても乾燥しても毒性は消えず、少量でも危険です。
    摂取してから症状が出るまで時間がかかるため、「少し舐めただけだから大丈夫」と思わず、すぐに動物病院に相談することが大切です。

    早期の対応で、多くの子は回復します。
    「ネギ類は絶対に与えない」—この一つのルールが、大切な家族の命を守ります。